●あかり(本田翼)は、葵(福士蒼汰)に手紙を渡したはずなのに葵が来てくれなかったので葵にフラれたと思っていました。でも、葵の机に入れておいた手紙は翔太(野村周平)が持っていました。葵は手紙のことを知らなかったのかもしれない……あかりにとっては信じられない7年目の真実です。
あかりの心には翔太に対する怒りとも悲しみともつかない複雑な感情が沸き起こっていました。あかりは翔太に問い質す前に、まず葵に手紙のことを訊いてみることにしました。
「葵さあ、手紙のことって、覚えてる?」
「手紙?何のこと??」
「いっしょに花火見たでしょ。そのあと、葵の机に入れといたんだけど……」
「いや、そんなのなかったけど」
「…………」
「手紙書いたの?」
「読んでないならいいよ」
「よくねえよ。なんて書いたんだよ」
それをここで言わせるの?つらいわ……あかりはラブレターだったことを誤魔化しました。
「来年の……来年の受験……本番前に牛乳飲むなって。ほら、葵、緊張するとおなか壊すでしょ。高校受験の時も大変だったよね。休み時間ずっとトイレこもっててさ」
「なんだよ、それ。そんなことわざわざ手紙に書くなよ」
「ごめんごめん」
葵にもうすこし洞察力があれば、あかりがとっさに出まかせを言って何かを隠していることに気がついたと思います。でも葵は単細胞なのであかりの言葉を文字通りに素直に受け取ってしまいました。
あかりは、葵にフラれたと思っていたのは誤解だったこと、そして翔太と花火大会の日に遇ったのが偶然ではなかったことを確信しました。翔太に対する疑念は決定的となりました。さらに、悪夢のような事実があかりを襲いました。
●あかりは研修医の沢田一葉(新川優愛)に呼び止められました。一葉はあかりの実家の造船所が借金を抱えて倒産したことを知っていました。翔太があかりの父・寛利(小林薫)にお金を渡しているところも目撃しています。一葉は、あかりと寛利が結託してお金目当てで翔太に近づいていると誤解していました。
「お金目当てなんですよね」
「何言ってるんですか。違います!!」
「じゃあ、あの50万は何なんですか」
「何のことですか?」
「あたし見たんです。あなたのお父さんがあそこで蒼井先生からお金を受け取るところ」
「……」
「お父さんといっしょに騙そうとしているんですよね。これ以上彼に近づかないでください」
翔太は自分の知らないところで父・寛利に会っていた……しかもあんなに会いたがっていた父を自分から切り離そうとしていた……何も知らなかったあかりは本気で翔太のことが好きでした。目の前が真っ暗になるというのはこういうときのことを言うのかもしれません。
●「盗人にも三分の理」ということわざがあります。翔太の不実をなじるあかりに翔太が逆襲しました。
「じゃあ訊くけどさあ。葵に会って、少しも気持ちが揺らがなかったって言いきれる?手紙見つけたとき思わなかった?ちゃんと葵に届いていれば、運命が変わっていたのかもしれないのにって」
翔太クン、それを言っちゃあおしまいだよ。人はいろいろなことを考えたり思ったりするものです。ときには180度違う気持ちになることだってあります。人間の心に100%なんてありません。もっとも翔太に言わせれば「オレは100%あかりが好きだ」と言い出すかもしれませんけど。
翔太の言っていることは「当たらずといえども遠からず」です。いや、図星といえるかもしれません。でも、そういうことを言い出す翔太にあかりは失望しました。翔太の言っていることは正しいとか正しくないとかという以前に無粋の極みです。最低です。
その日、あかりは自分の部屋には戻りませんでした。どこかへいなくなってしまいました。人生に絶望して身投げでもするつもりかもしれません。