原作の小説に出てくる半沢直樹はドラマの半沢直樹と違ってクールな人物らしいです。でも、堺雅人が演じているホットなんだかクールなんだか、善人なんだかワルなんだか、はっきりしない半沢直樹も悪くありません。人間臭くてなかなか魅力的です。
●このドラマには笑えるシーンというのがあまりありません。意識的に笑いを封印しているみたいです。とにかくシビアなシーンが続きます。
それでも、第2話で、一箇所だけ、(おそらく勘違いをして)大笑いしてしまったシーンがありました。さて、どこでしょうか?
半沢直樹(堺雅人)はいつもは標準語でしゃべります。ところが、竹下金属の社長・竹下清彦(赤井英和)と協力して東田満(宇梶剛士)を探し出そうという話になったとき、突然慣れない大阪弁で、
「こちらこそ。お願いしまっせ。社長はん」
と言ってしまいました。すると竹下社長が思い詰めたような表情で半沢直樹に言いました。
「ひとつお願いがあるんやけどな」
「はい(なんでしょうか?)」
「気色悪い大阪弁はやめてくれへんか」
このときの半沢直樹の顔といったらありません。大笑いです。
しかし、よくよく考えてみると、ここは笑ってはいけないシーンだったのかもしれません。
半沢直樹は竹下社長に自殺した父(笑福亭鶴瓶)の面影を見ていました。半沢直樹の父親も朴訥でコテコテの大阪人でした。半沢直樹は父親を思い出して思わず大阪弁が出てしまったのかもしれません。半沢直樹の複雑な胸中を思うと笑うどころか感動的シーンでした。
「いいか直樹、どんな仕事してもええ。人と人とのつながりだけは大切にせなあかん。ロボットみたいな仕事だけはしたらあかんぞ」
竹下社長を見ていて半沢直樹は自殺した父親が遺してくれた言葉を思い出していたのかもしれません。
●第2話では西大阪スチールへの融資資金を回収しようとする半沢直樹と東田満の脱税を摘発して税金をむしりとろうとする大阪国税局の統括官・黒崎俊一(片岡愛之助)のデッドヒートが繰り広げられました。
半沢直樹がやっとの思いで抑えたと思った5000万円のハワイの別荘を国税局の黒崎俊一に横取りされてしまいました。泣く子と国税には勝てません。半沢直樹の奮闘努力も最後は徒労に終わることになりました。それでも半沢直樹は黒崎俊一に宣戦布告をしてしまいます。
「この借りは倍にして返します。やられたらやり返す。倍返しだ!」
これが半沢直樹の流儀です。相手がお上でも泣き寝入りはしません。粘着質でおネエ言葉の黒崎俊一よりも本当は半沢直樹のほうが執念深いのかもしれません。負けん気の強い半沢直樹はいつになったら越前さんのような悟り(?)の境地に達することができるのでしょうか……。
越前さんというのは「泣くな、はらちゃん」に出てきた薄幸で地味で自閉的な女性のことです。麻生久美子が演じていました。次のようなテーマソング(?)があります。